私のエッセイ

2017.02.17更新

巷間にはよく、陣痛は日もとっぷりと暮れて家族も寝静まり、街が漆黒の闇に沈む丑三つ時に起き易い言われている。まあこれは、人間誰しも外が暗くなると何となく心細く不安になってくる。予定日を間近に控えた妊婦ではまた一倍で、当然アドレナリン、ノルアドレナリの分泌が促進され、それによって子宮の収縮が起こり、それが閾値を超えると陣痛となってくるという図式も考えられなくはないが、だからと言ってうしみつ時に分娩が多いというには説得力としては些か弱いような気がする。因みに、妊婦を四六時中真っ暗な部屋に待機させて分娩を誘発するという治験発表には私はまだお目にかかっていない。
   先日の9月19日の台風20号の朝、当院では女児が誕生した。昔から台風の日には分娩が多いということは私も聞いていた。台風という異常な低気圧に子宮内圧が上昇、それが引き金になって前期破水と陣痛が誘発され分娩に至るという考え方で、これはうしみつ時論よりは遥かに信憑性がありそうである。また先日の講演会後の懇親会の席でも、或る先生が以前に勤務していた病院では台風の夜は前期破水が多いというので、当直医は全員懐中電灯を枕元に置いて寝たものだというようなことを話しておられた。一方で私は、きのこ類が台風が近づくと身の危険を事前に察知して慌てて傘を開いて胞子を地面に落とすという事実に着目して、私なりにこんな風に考えても見た。それは、ひょっとしたらこうした自然界の種族保存の摂理が人間界にも働いているのではないか。現代でこそ、我々は正確な気象情報や耐災害建築によって、台風に対する恐怖はさほどでもないが、恐らく昔の人は台風をかなりの致死災害と受け止めていて、その時代の妊婦には、台風時には一刻も早くこの世に我が子をという種族保存の摂理分娩が少なくなかったに違いない。そしてその摂理分娩のプログラムが母親の脳に刷り込まれたまま現代に伝承されて、今でも台風警報が出るとそのプログラムにスイッチが入って分娩が誘発されるのではないかという考えである。でもこれは穿ち過ぎでもいいところだと言われそうな気がする。
(まつたけ考) 折から今はまつたけシーズン、市場の店頭にはようやく外国産に比べて薫り高い国産も見られるようになった。ふと見ると“つぼみ”の方が多いことに気付く。どうしてなんだろう?食用なんだからボリュームも多く、薫りもいい“開き”の方がいいと思えるのだが。しかも人間は傘を開いて地上に胞子を撒き散らしたいという本能まで無視して、自分目先の都合だけで“つぼみ”を摘み取ってしまう。えっ、これでいいんだろうか?私にはこの人為的少産が、国産物の年々の減少に無関係とはどうしても思えない。一方、我が国の人間社会での少産少死現象は益々高齢化社会に拍車をかけて行っているが、その過程で何処か市場のまつたけに似たようなことが起こってはいないだろうか?でもこれより先のリンクは、ひょっとして我々の診療科に火の粉がかかることにもなり兼ねないので、この辺でクリックを遠慮させていただくことにする。
                                  (平成9年)

投稿者: 中野産婦人科

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