私のエッセイ

2017.02.17更新

NHKテレビの「ダーウインが来た」をご覧になっていらっしゃいますか?私もこの番組が好きでよく見ておりますが、その中でも特に印象深いのは、雄の雌に対する涙ぐましい求愛の努力です。自分の美しい色とりどりの羽を広げて見せたり、自慢の喉を披露したり、中には求愛のダンスをしたりして雌の気を惹くんですね。中でも蜂の世界なんか女王蜂を取り囲んでまさに逆ハーレムです。またその一方で、雌を奪い合う雄同士の壮絶な戦いすら見られます。私はこの番組を見ていつも思うんです。「人間を除く地球上の生きものは、すべて雌を中心にして雄がその周りを囲むような形で生活し、雄を選ぶ決定権も雌にあるという私達人間にとっては考えにくいこうした事象こそ、自然界の本来の姿ではなかろうか。そして地球上の生きものの中で人間だけが、いつ、どこで、どう間違ったのか、自分達の世界にだけ通用する男性中心の社会を造ってしまった」と。だから我が国の"女性運動の先駆者"の平塚雷鳥が敢えて言ったのかも知れません。「元始女性は太陽であった」と。 
  ところで、WHOの2016年の発表によると、日本人の平均寿命は、男性80,5歳、
女性86,8歳でした。日本では、女性は男性より7歳も長生きして人生を楽しめるとはまことに羨ましい限りです。しかも、これまでの平均寿命の年次推移から見ても、嘗て一度だって男性は女性の寿命を超えたことはないのですから、寿命の女性優位は、殆ど自然界の摂理と言っても過言ではなさそうです。
  これは、男女の資質と環境の違いにも因ります。まあ人間も一応哺乳類のうちですので、男性は生来一匹狼型、女性は生来集族型が適っているようです。男性は交友関係にしてもあくまで会社関係、職域関係の域を出なく、退職後、引退後はその幅も狭められていくに対して、女性は、地域社会、子供の学校、習い事、スポーツジム関係等など決して友達に事欠くことはなく、年齢と共にその範囲は寧ろ拡大していきます。週日の真昼間から、センター街や元町通りでは三々五々と連れ立っておしゃべりしながら闊歩している中年の女性を多く見かけますし、また洒落た料理店の中はいつも女性客でいっぱいです。また地域社会の催し物でも参加者の殆どが女性で、男性はほんの一掴みというのが現状です。また女性は自分自身の為にお金をかけています。外見を飾る服や化粧品を始め、習い事や趣味とか資格取りといった"自分磨き"に積極的に金を使います。だから女性は益々自分に自信を持ち強くなっていきます。一方男性は、定年後や妻に先立たれたりすると、生来人と連れ立って行動することが苦手なだけに男女の差は益々大きくなっていきます。家事にしても、女性はお手の物ですが、男性には厄介な代物でしかなく寧ろ家事は大きなストレスにもなりかねないからです。因みに、最近では、妻に先立たれた夫の平均寿命は5年、その内7割が3年以内に後を追うと云われています。他方、夫に先立たれた妻の平均寿命は何と20年ということです。
  しかし最近では、男女の寿命の格差は、こうした資質と環境以前に、既にゲノムレベルで運命づけられているということが解ってきたのです。
(1)

精子には、男性になるY染色体精子と女性になるX染色体精子の2種類がありますが、男性精子は酸性に弱く膣内では1日位しか生存出来ないのに比して女性精子は2日から3日位生存可能ですし(1回の射精につき男性精子数は女性精子の約2倍なので男女の出生児数に差が出ないと云われています)、また女性精子の比重は男性精子の比重より大きく、精子を遠心分離機にかけると、女性精子は中心部分に位置し男性精子は周辺に散るといわれます。このように女性精子の生命力は男性精子のそれを上回っているようです。
(2)

また最近の報告では、公害等の環境因子によって、年々精子の動きが悪くなり濃度も低下して来ているようで、人間の精子は85%に異常が見られ、正常な精子は僅か15%に過ぎないとも云われていますし、最近フィンランドではこの5年間に精子の濃度が27%も低下したという報告もあります。
(3)

紀元前には、人のYもXも同じ大きさだったのが、年代と共に、Yの大きさは次第に縮小してきて、オーストラリアのジェニファー教授によると500万年後にはY染色体が消滅するとさえ云われています。これは女性は、例えば片方のXに遺伝子の損傷があってももう一方のXで修復(クロスオーバー)出来るが、男性のYはXによって修復出来なくその部分だけ短くなっていくというのです。
(4)

またこうしたXとYの大きさの違いは、例えば小説家が原稿を書く場合、広い部屋ではゆったりとした気分で筆も進みますが、狭い部屋では筆の走りも悪く書き損ないも多くなるように、男性の狭いYの部屋では"出来損ないの細胞"が多く産生されて来ます。その際、その人の免疫力が高いとその細胞を死滅させますので細胞数が減ってその結果老化が進み、また逆に免疫力が低いとその細胞はガン化して寿命が短くなるということになります。
(5)

女性のXには人間の生命にとって重要な遺伝子が1000以上ありますが、男性のYには性を決定する遺伝子以外には殆どなく、Yの遺伝子数はXの10分の1にも満たないと言われています。

  このように、男女の寿命の格差は既にゲノムレベルに始まり、それに資質と環境によってより増幅されてくるようで、これからの社会は女性中心という自然界の"本来の姿"に確実に近づいていると言えるかも知れませんし、また自分が生き残って行く為には滅び行く乗り物から栄え行く乗り物に乗り換えるという"利己的遺伝子"がY型の乗り物からX型のそれに乗り移ろうとしている時期であるのかも知れないのです。
  おそらくそのうちにきっと誰かが言うでしょう。「来世紀女性は太陽であろう」と。

投稿者: 中野産婦人科

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